ティボーの弾くヴィタリのシャコンヌ~勝手にヴァイオリンの日

ジャック・ティボーの弾いたヴィタリ作曲シャコンヌ
これは絶品です。

○スタイル
ティボーは私の最も好きなヴァイオリニストです。
ロン・ティボーコンクールはその名を冠にしています。
ティボー(1880-1953)は活躍したのが20世紀前半ですので、はじめて聴く人は違和感を感じるかもしれません。
私も初めて聴いたときはそうでした。画像

○ポルタメント。クライスラーよりもさらに大きな表情でかかっています。
はじめはこれに抵抗がありました。
普通ポルタメントを意識してかけると、ただいやらしいものになってしまいます。
今は聴いていてつくづく思うのですが、これほどいやみなく絶妙にかけるのはティボーをおいていないと思います。

○独特の音程感。
音程は平均律ではありません。
純正律でもありません。
私は、最初は分からなくて下手で音程悪いと思っていました。
違います。
旋律を表情付けするための意識して高めや低めにとられる音程。
チェロのカザルスも聴いてみるとそういう音程のとり方をしていましたが、ティボーのほうがもっと思い切っています。
はまると普通の音程で弾いているほかの演奏が物足りないです。

○音色。
 心に染み込んでくる音です。
SP原盤ですからノイズはありますし、鼻にかかったSPのヴァイオリン独特の特性はあります。
でも、同時代の他のヴァイオリニストを聞いても、この最高のストラディヴァリウスをヴォアランの弓で操るティボーの音のようなチャーミングな音は聞いたことはありません。
この楽器はティボーが来日するときに飛行機事故で最期となったときに運命を共にしてしまいました。

○独特のリズム感
 畳み込むような宙を舞うようなリズム感があります。
崩している?
正確な譜面わりからすればそうでしょう。
でも、演奏は限られた情報しかない譜面から再創造する再現芸術です。
そこからこれだけの感動を得られれば文句のつけようがないのです。

ここに紹介するのは小品を集めたものです。

ヴィタリのシャコンヌはその中でも感動的なこの曲。
シャコンヌは形式名でバッハの無伴奏が有名です。ヴィタリはバロック時代の作曲家ですが、偽作とも言われています。
聴けば分かりますが、これはもうロマン派の曲です。
アルビノーニのアダージョと同じようなものです。
バロックにはお目にかかれないような転調の仕方があります。
ティボーはこれを思い切りロマンチックに弾いています。
尤もヴィヴァルディもクープランもエックレスもみんなロマンティックに弾いていますが。

今、私の持っている盤はカタログに見当たらなかったので、こちらをご紹介します。
どれも味のある演奏です。


Jacques Thibaud The Complete Solo Recordings 1929-36 2CD¥1,960@HMV

Albéniz: Malagueña, Op. 165, No. 3/ Tango
Bach, J S: Gavotte & Preludio (Partita 3)
Debussy:Minstrels
Desplanes: Intrada
Eccles, J: Sonata
Falla: Danse Espagnol/Jota
Fauré:Berceuse
Granados: Danse Espagnol
Lalo: Fantaisie Norvégienne/Symphonie espagnole, Op. 21
(live concert 17th November 1941 and previously unpublished)
Suisse Romande Orchestra, Ansermet
Marsick: Scherzando
Mozart: Piano Concerto No. 21 in C major, K467 'Elvira Madigan' - Andante
Adagio for Violin and Orchestra in E, K261
Paradies: Sicilienne
Poldini: Poupée valsante
Saint-Saëns:Le Déluge Op. 45/Havanaise, Op. 83
Szymanowski: La Fontaine de Aréthuse
Veracini:Menuet & Gavotta
Vitali, G:Chaconne
Vivaldi:Adagio

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この記事へのコメント

2007年04月15日 22:35
こんばんは。
私も今晩はティボーを聴いていたのですが、この奏法には裏づけがあったのですね。
あの色気のある「独特の音程感」にはこうした技術的な工夫があったこと、勉強になりました。
ダンベルドア
2007年04月15日 23:13
こんばんは

>あの色気のある「独特の音程感」にはこうした技術的な工夫があったこと、勉強になりました。

確かなことは分かりませんが技術的な工夫だったのか、あるいは天性のものだったのかもしれません。
機械式録音の初期からすでに他と違うあの色気は濃く感じられます。
2007年04月16日 08:03
ダンベルドアさま お早うございます。
コメント、ありがとうございます。

ティボーの名前は知っていても、演奏は聴いたことがありませんでした。この機会に聞いてみたいと思っています。
ご紹介、ありがとうございます。
ミ(`w´彡)
2007年04月16日 09:48
こんにちは。ティボーはSP時代に借りていた中に、ハイドンのピアノ三重奏曲が記憶にあります。勿論コルトー、カザルスとの演奏でしたが、独特の魅力があったようです。
残念ながら、今ティボーの演奏は一枚も所持していないので、この機会に何か欲しくなりました。
ダンベルドア
2007年04月16日 20:46
こんばんは。
ティボーは録音は古いですが,
他の誰とも違う甘い音。
1920,30年代くらいの若い頃の方が晩年の放送録音に比べより特徴が出ていると思います。
聞いてみてください。
ダンベルドア
2007年04月16日 20:48
>rudolf2006さん

↑前の記事,宛名を忘れました。
失礼しました。
ダンベルドア
2007年04月16日 20:51
丘さん
こんばんは。
ハイドンのピアノ三重奏曲もいいですね。
これを聞くとハイドンってこんなにも暖かかったのかといつも思います。
宜しかったら,ティボーのソロも聴いてみて下さい。
2007年04月16日 22:47
こんばんは。
ティボーどころか、今回取り上げたヌヴーも最近手に入れたCDでした。弦楽器全体について、精進がたりませんね。これからも色々ご教示願います。
2007年04月16日 23:06
こんばんは! ティボーの録音はひさしく聞いていないので、いくぶん自信がないのですが、ダンベルドアさんの仰るポルタメントのかけ方ならびに独特の音程感に関し、ルイ‐リュシアン・カペーがその域に達していると思われるのですが、いかがでしょうか?
ダンベルドア
2007年04月17日 00:27
garjyuさん
こんばんは

>弦楽器全体について、精進がたりませんね。

いや。誰でも新しい録音が入手しやすいし、音も良いので古い録音を聞き出すのは後になりますよね。
 私は、学生時代いろいろ聴かせてくれた先輩がいたので最初からSP時代も聞いていたのです。
ダンベルドア
2007年04月17日 00:32
Niklaus Vogelさん
こんばんは

>カペーもその軽やかな音がティボーに似ていますね。

同じポルタメントでもティボーのほうが艶っぽくて、カペーは清楚な感じかな。
私もカペーは数枚しか持っていないので自信がないのですが。
カペーSQのハイドン「ひばり」などは絶品ですね。
2007年04月17日 22:13
ダンベルドアさん、こんばんは。TBありがとうございます!
カペー四重奏団による「ひばり」がどのような演奏だったか思い出せずに、今聞きだしました。ああ、もう最初から惹きこまれています…
(5月15日の「勝手に弦楽四重奏曲の日」、何を取り上げるか、さらに難しくなってきました…(笑)。)
またよろしくお願いいたしますm(_ _)m
ダンベルドア
2007年04月18日 23:49
Niklaus Vogelさん
こんばんは
カペーのひばり、良いでしょう。
私はLP時代からの愛聴盤です。
カペーを聴くと4つの楽器の和音、リズムがひとつの楽器のように聞こえる弦楽四重奏の理想形だと思います。
ビオラ野郎
2009年05月21日 00:10
はじめまして、ビオラ野郎と申します。すばらしい記事でしたので一言コメントさせてください。

そうですよね。ティボーが1番です。そこをみんなよく分かってないのではないかと思います。
自分も最初こそ辟易したものの、今ではなんのためらいもなく受け入れられます。ビターリをはじめ2,30年代録音の小品の数々はいわずもがなですが、僕はさらに晩年のモーツァルトのコンチェルト3番やブラームスもありと思いますし、さらに詩曲に至っては奇跡と言ってもいいくらいだと思います。
なんというかティボーにかかると、一つ一つのフレーズ、一つ一つの音符が楽譜を超越しているといいますか、優美かつ無類の想像力による生命の充実、まことに芸術的、その曲はこれ以上美しく弾けないだろうなと思ってしまいます。
生まれついての芸術家/天才なんですね、ティボーは。本当は私めが偉そうに語ってはいけないのです。
ティボーのことでしたので熱くなってしまい、失礼いたしました。
演奏会などには行かないたちですが、ティボーの良さを知る人の演奏はぜひ聞いてみたいきがします。健闘をお祈りいたします。失礼しました。
ダンベルドア
2009年05月21日 23:21
ビオラ野郎さん

そうです。ティボーのヴァイオリンは別格で一番ですね。
モーツアルトのコンチェルト,詩曲どれも素晴らしい。残された録音は宝です。もちろん生で聴けたらどんなに良かったかと思いますが,昔の録音でもその独特の歌いまわしは良くわかるのですね。最近はyoutubeで弾いている姿が見られるようになって嬉しいです。
屋根の下のヴァイオリン弾き
2013年03月04日 23:20
父親の代からのティボーファンです。
父の話ではティボーの演奏会のアンコールはいつも10数曲でこれだけ日本人に愛された演奏家は他にいないと事ある度に私にその頃の話をしてくれました。
父が語るにティボーのヴァイオリンの音色は人へのやさしさが伝わる。ヴァイオリンは正直だから、、と又会場の人との会話もあったそうで演奏会はいつも和やかだったそうです。
父の楽しそうに話すティボーの話で私もティボーのファンになりレコードも購入しティボーの演奏にただただ驚くばかりです。

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